Behind the Expression

【カンボジア】あの日の僕から子供達に伝えたいことがある 〜ラッパー:GV Lux〜

投稿日:2018年9月10日 更新日:

抜群の運動神経と天性の無邪気さを持ち、小柄ながら圧倒的な存在感を放つGV Lux(以下、Lux)。

独特な感性で言葉を発し、舞台を縦横無尽に躍動する姿を見ていると、どこか遠くの惑星から突如舞い降りた奇才なのでは?と思ってしまう。

人呼んで「天才サルの子」。
幼少期からダンサーとして舞台に立ってきた彼は今、ラッパーとしても日夜研鑽を積んでいるところである。

普段あまり多くを語らない彼に、ラップに込める想いを語ってもらった。

Artist's Profile

GV Lux(ジービー ロイ)
ラッパー、ダンサー
1993年生まれ
カンボジア・シェムリアップ州出身盗作やコピーが蔓延するカンボジアの音楽・ダンスシーンにピリオドを打つべく立ち上がった、パフォーマンスチーム「POLARIX(ポラリックス)」のメンバー【POLARIX  Official Facebookページ】
https://www.facebook.com/polarixcrew/

「ラッパー GV Lux」をイメージさせた友人の一言

12〜13歳位の時、オールドスクールのラッパーが歌う動画を見て、ラップに興味を持つようになりました。
カンボジアのオールドスクールですよ。

特に、Khmer 1 Jivit (※1)が好きで、彼の曲はよく聞いていましたね。
(※1)カンボジア人ラッパー。“Khmer 1 Jivit”は、「カンボジアは永遠」という意味を持つ

その頃から自分でもラップを口ずさむようになったのですが、遊びでやっていただけで、プロのラッパーになろうとまでは思っていませんでした。

ラッパーになりたいと真剣に思うようになったきっかけは、友人から背中を押されたことですね。

18歳の頃、「おまえのラップかっこいいな!ラッパーになれば?」と言ってくれるヤツがいたんですよ。
その言葉を聞いて、目覚めた感じです。

「自分でオリジナル曲を作りたい!」と思うようになりました。

練習といっても、はじめは売れているラッパーの口真似をしていただけでした。
今は、彼らのラップをよく聴いて、スタイルの研究をしています。

フローにしても、リリックにしても、早く自分のスタイルを確立したいですね。

信じられるのは自分だけ。屈辱の体験から生まれた『Don’t Trust』

 

『Don't Trust』(GV Lux)
My name is Lux.
I like Jumping.
Jump to this place, jump to that place.
Can’t standstill Because afraid of bad things and no one’s gonna help.
There’s only jealousy people.
And never seen their own mistakes.
Those people think they can bring something when they die.
They’re so stingy.
Never did something good, and the next life they will be dust, so please learn from other man.
I’m small but don’t mess with me.
GV Lux is not the gang.
Don’t play with me if you’re not sure.
I remind you if you don’t want to die like a fly.
standstill and just watch.
I’m serious, not kidding.
Go away now kids.
Don’t mess with me, I’ll knock ur head.

※English Translation(Originally written in Khmer)

 

この曲で一番伝えたいことは、「簡単に人を信用するな」ということ。
特に、自分より若い人たちや子供たちに伝えたいメッセージです。

はじめにこのトラックを聴いた時、ある出来事を思い出しました。

あれは何歳の頃かもう忘れましたけど、確か16〜17歳の頃ですかね。
仲間に騙されたんです。

家が貧しかったので、僕は子供の頃から学校に行かず、舞台劇のダンサーとして働いていました。

ヤツらは甘い言葉で僕に近づいてきて。
何も分からなかった僕は、なんとなく楽しそうだったからついて行きました。

いつからか、ヤツらとは「ブラザー」と呼び合う仲に。

でも、気づいた時にはすでに遅かった。
舞台で稼いだ給料をせびられ、ドラッグに注ぎ込まれていました。

子沢山だった両親は、きょうだい全員を育てきれなくて、僕は7歳の頃に祖父母のところに預けられたんです。
そんな環境だったこともあり、子供の頃に「何が正義で何が悪か?」ということを、きちんと教わった記憶がないんですね。

だから、悪いヤツらのことも簡単に信用してしまった。
利用されただけで、何も残らなかった。

当時のことを思い出すうちに、怒りが湧いてきて。
感情を溢れるまま言葉にしたら、今回のリリックになりました。

人を導くラップだってあることを示したい

今回の曲もそうですが、僕はラップを通じて人生を語りたい。
特に若い人たちに、僕がきちんと教わってこなかった「正義」や「悪」についても伝えていきたいと思っています。

カンボジアでもラップを聴く人は結構いますけど、あまりメジャーではないですね。
曲がどれもこれも似通っているし。
カンボジアでラップシーンが盛り上がるのはこれからだと思います。

特に、古い世代の人達の中には、ラップを「西洋のもの」「ギャングがやるもの」と思っている人も多くて。
あまりよいイメージを持たれていないんですよね。

でも僕は、ラップというものは、人生にまつわるメッセージを伝えたり、時にアドバイスしたりできるものだと思っています。

多くの人にラップを聴いてもらい、ぜひリリックの意味も知ってもらいたい。
ラップは決してギャングスタだけのものではないということを、僕自身が証明していけたらと思うんです。

------------------

“北極星のごとく、誰かの道しるべとなりたい”という想いから名付けられた「POLARIX(ポラリックス)」というチーム名。
Luxは今、かつての幼き自分を想い、ラップという自らの持ち場から若者たちを先導する存在となるべく、声を上げている。

自分のように、無知ゆえに悲しい出来事に遭遇するような状況には陥ってほしくないから。

インタビュー時25歳という彼の年齢は、ちょうどカンボジア全体の平均年齢と重なる。

後に続く、さらに若い多くの人たち、子供たちへ。
「天才サルの子」は今日も、歌で、背中で、メッセージを送り続ける。

(Interviewed & Written by HARU)

 

 

-Behind the Expression

Copyright© LifeArt Gallery , 2019 All Rights Reserved.